15色のイタリアンレザー・ブッテーロ

革の紹介① イタリアンレザーブッテーロ

こんにちは。

初回のブログ(※1)ではCxC Leatherの成り立ちについてお話しさせて頂きました。

次のテーマは欧州から取り寄せている3種類の革素材について。

  1. ブッテーロ(イタリア)
  2. ワープロラックス(ドイツ)
  3. シュリー(フランス)

これを素材ごとに3回に分けてご紹介します。


皆さんは「革」と聞くと何を連想されますか?

大半の方はブランド物のバッグや財布、牛革、馬革、ワニ革など動物の革をイメージされるかと思います。

では、「皮と革の違い」って何でしょう。

皮はリンゴの皮、餃子の皮、動物の皮など、動物や植物の外表を覆っているもの。
革は牛革、馬革、ワニ革と動物の皮から毛を取り除き、防腐処理を施していく鞣し(なめし)作業をしたもの。

リンゴの革って書かないし、餃子の革と書くことは基本的にないですよね。
毛皮って一応、防腐処理はしてるけど、毛はあるので毛革とは書きません。毛皮です。

完全に毛が取り除かれ、鞣し作業を終えて、世の中に出回っているのが革です。

弊社で取り扱っているのは「革」となるわけですが、革と聞いてヌメ革、クロム革についてご存知の方は多くはありません。また、革といえば、タンナー、ヨーロッパと連想される方は結構なマニアです(笑)

今回はそんなコアな部分をご紹介できればと思います。

国産の革もいいけど欧州の革に一日の長あり

2016年の創業当時から素材にこだわり、少しでも良いものを使いたいという経営理念・経営哲学より、これまで多種多様の革をセレクトしてきました。

当初セレクトしたのは国内のタンナー(革を作る会社)が鞣している革を採用していました。

国産の銘革といえば栃木レザーなどが当てはまります。公式ホームページには載せていませんが、現在もminnneやcreemaなどのハンドメイドサイトで一部取り扱いは継続しています。

物作りにおいては先進をいく日本のタンナーが施す仕事はとても丁寧で、品質も見劣りするものがない革が多数あり、さすがはMade in Japanと唸るほど、非常に満足のいくものがあります。

ただ、「革」という文化を追求していくと、どうしてもヨーロッパに目が向きます。

世界のトップブランドが採用する革はヨーロッパのタンナーが鞣したものがほとんど。

特にイタリア、フランス、ドイツがトップグレードの革を取り扱っています。

革の王様ブッテーロ

余談ではありますが、当方、革を扱う前は古着の業界に携わっていた時期があり、ディテール、素材、歴史的背景やカルチャーについては、気になりだすと徹底的に調べては掘り起こす癖がありまして、革についても徹底的に調べあげて、これだ!と出会ったのが「ヌメ革の王様」ブッテーロです。

舞台はイタリア。

トスカーナ地方にあるタンナーで、コンツェリア・ワルピエ社(Conceria Walpier)で誕生しています。

トスカーナ地方というと、フィレンツェやピサの斜塔が有名ですね。

ローマから電車で1時間半くらいと近いので日帰り旅行もできちゃいます。フィレンツェに行くと、革手袋専門店だったり、革靴専門店だったり、革工房もあちこちで見られますし、革専用の職業訓練所まであります。空港に行けば老舗の革製品のお店もあって、それほど革産業が盛んな地域です。

革に精通した本物の革好きが受け入れられる場所といっても過言ではないでしょう。

アウトドアマーケットで売られている色とりどりの革手袋
フィレンツェのアウトドアマーケット

フィレンツェでも老舗のワルピエ社が誇る最高級グレードの革がブッテーロになるわけです。

どのような形で作られているのかというと、「バケッタ製法」とよばれる1000年以上も前から受け継がれる伝統製法で作られています。

バケッタ製法とは

植物から抽出されるタンニン(渋)のみを用いて、長い時間をかけて皮から革へと鞣していきます。

長い時間といっても1日や2日ではなく、とてつもなく膨大な時間がかかるもので、クロム鞣しは早ければ1日で仕上がりますが、バケッタ製法は1年以上かけて仕上げるものがあります。

革の王様といわれるだけあって、バケッタ製法を経て仕上がる革は、言わずもがな最高品質であることはお分かりいただけると思います。

気が遠くなるような時間をかけてタンニンで鞣せば終わりではありません。

植物脂を使った魔法のオイルを使って、さらにじっくりと漬け込んでいきます。それも革の芯までじっくりと時間をかけて染み込ませていくのです。

そうしてたっぷりのオイルを含んだ革はしっとりした手触りと繊維が詰まった堅牢な革でありながら、しなやかさも感じられるようになります。

化学薬品は一切使用していません。 近代化に伴い、機械化が進んでしまった現代でも、伝統を重んじるタンナー(革作り)が技術を継承して、手間暇を惜しまずに時間をかけて作り上げた革のみがバケッタレザーといわれています。

バケッタ製法について実際に目で確認してみたい場合、YouTubeにそれに近い動画がありますので参考になさってください。

引用:Vegetable Tanning process in Tuscany
引用元:pellevegetale

ブッテーロとはどんな革?

ブッテーロに使われている革はステア(成牛)のショルダー(肩)部分が使われます。

肩の部分ですから、全体面積の割合から取れる革は当然少なく、希少な革となるわけです。

筋肉の繊維密度が高く肉厚となるため、財布やスマホケースなどのアイテム小物が多いように思います。

染料仕上げのため、ショルダー部分はトラと呼ばれるシワが多く見られたり、革の表情がダイレクトに出ます。

牛革の部位


革業界には経年変化(時ともに美しくなっていく)という言葉があります。

一般的な経年劣化(乾燥などによって消耗していく)ではなく、バケッタ製法によって、革に染み込んだオイルによって磨かれ、時とともに色が深まり、美しく艶を出しながら、ひび割れなどを起こさずに耐久性を増していくという特徴をブッテーロは持っています。

ブッテーロには経年変化の他に、もう1つ、発色の良さという定評があって、バケッタ製法によって、植物由来のオイルでじっくりと繊維まで綺麗に染まった革は、他の革では見ることのできない美しい革に仕上がります。

イタリアンレザーらしく鮮やかなカラーで、バリエーションも豊富で、弊社では15色に及ぶカラーを展開しています。

  1. チョコ
  2. ブルー
  3. ワイン
  4. レッド
  5. ピンク
  6. キャメル
  7. ブラック
  8. ネイビー
  9. パープル
  10. オレンジ
  11. イエロー
  12. グリーン
  13. ホワイト
  14. ナチュラル
  15. ターコイズ

ブッテーロは表面がデリケートで傷つきやすい反面、復元していくように馴染んでいく、つまり使い込むにつれて艶が増していく、まさに「育つ革」なので、エイジングを楽しみたい方におすすめです。

ブッテーロのメンテナンス方法

ブッテーロは育てる革。

時とともに深まっていくエイジングに醍醐味を感じる革なので、「革の色が変わるのを防ぐ」、「購入したままの表情を保つ革」ではありません。

そのため、ヌメ革をご使用になったことがないお客様は注意が必要です。

オイルを贅沢に含んでいるため、革が柔らかく、表面に傷がつきやすくなります。

革に傷が付くとショックですよね。とくに財布やスマホケースは活動範囲も広いため、爪や鞄で傷つけてしまいがちです。

でもご安心下さい。

ブッテーロは修復力に優れているため、乾いた柔らかい布で少し強めに研磨していくと細かな傷は目立たなくなります。

定期的に研磨を繰り返すことでオイルが浮き出て、表面にコーティング効果も現れますので過度にメンテナンスする必要はありません。

毎日のご使用、定期的な乾拭きをするだけで、愛着が湧いてきますし、味のある革へと変化を楽しみながら、毎日を共に過ごす相棒へと変わっていきます。

1番気をつけるべきなのは水分です。

水分は大敵です。汚れやシミの原因となるのはもちろん、濡れたまま放置するとカビ発生の原因にもなりますので、以下のアイテムがあると便利です。

・ヌメ革専用の防水スプレー
・オイルが消失するのを防ぐ保革クリーム

レザーケア・コロニル社がおすすめです。

なぜブッテーロを採用したのか

先に述べさせて頂きました通り、創業当初は日本のタンナー(革作り)が鞣した革を採用していました。

国内のタンナーもピット製法といって、バケッタ製法と同じように植物から抽出されるタンニン(渋)のみを用いて時間をかけてゆっくりと鞣すタンナーが存在していて、日本で作られた革の質は非常に素晴らしいものがあります。

一般的に日本のタンナーが鞣す革は北米産の原皮を輸入しています。

ただ、原皮自体、北米産と欧州産を見比べてみると、革質が全く異なっていて、北米産の方が荒いことが分かりました。

これは当方の主観になりますが、北米産と欧州産の成牛では当然、食べてるものが異なるのか、革質も地域による影響が存在すると認識しています。

革はあくまで食文化の副産物ということですね。

また日本のタンナーの鞣し方は革を縦割りにした半裁と呼ばれる大判で革を鞣していきます。鞣された革は主に背中からお尻にかけた比較的繊維が均一なベンズと呼ばれる部位が使われます。半裁で革を鞣すと、お腹周りや肩にかけた部分の繊維が緩く、シワだらけで使えないといった箇所が出てきます。そのため、革の綺麗な部分=ベンズというのが自分の認識でもありました。

変わって、欧州の革ブッテーロはステア(成牛)のショルダー(肩)部分が使われます。非常に鮮やかで綺麗な革の表面、これぞ革という存在を感じることのできる表情があり、特筆すべきなのは繊維の詰まり方です。

刃を入れるだけで薄っすらと光沢が出て、さらに磨きを加えると繊維の詰まった革はツルッとした手触りと光沢のある仕上がりになります。

この感覚は他の革では味わうことができません。

しかも革の隅っこまで繊維の詰まりがあるので、非常にロスが少ない革というのもブッテーロの更なる魅力かと思います。

良い革はいくつもありますが、「革の王様」に初めて触れた時の感動は今でも鮮明に憶えています。

真っ直ぐ切れる、切れ目が揃う、綺麗に削れる、磨けば光る、当たり前じゃないか?と思われるかもしれませんが、これが当たり前にできる革はそう多くはありません。

まるで銘木で箱を作るような感覚で「切る、貼る、削る」一連の作業が出来る最高品質の革。

革職人としてブッテーロに出会えたことは本当に幸せなことであり、その魅力を多くの人に届けたいとCxC Leatherが扱うメイン革の一つとして採用を決定しました。

※1 CxC Leather(シーバイシーレザー)のスタッフブログ始めました

関連記事一覧