こだわりの素材紹介 倉敷帆布
こんにちは。
弊社が強いこだわりを持って扱っている革はブッテーロ(※1)とワープロラックス(※2)であることは、これまでのブログでも書かせていただきましたが、数ある商品ラインナップの中で、革以外の素材に主眼をおいたアイテムが1つだけあります。それがトートバッグです。財布やペットボトルを入れるちょっとしたお出かけ用のSサイズ、通勤、通学に活用できるMサイズ、マチが広い大きめのLサイズならちょっとした旅行や、海水浴、マザーズバッグとして使用するなど幅広い使い道があって、弊社の主力アイテムとして、安定した人気を誇ります。
当ブログではトートバッグで使用する生地「倉敷帆布」についてご紹介をさせていただきます。
岡山生まれの倉敷帆布
国産の最高級帆布とされる倉敷帆布は株式会社バイストン、株式会社ハート・プランニングの2社が商標名を登録している生地で、その名前の通り、岡山県倉敷市を産地として、明治時代以降、130年以上の歴史を持つ伝統的な織物です。弊社は株式会社バイストンとお取引をさせていただいております。
岡山県は「晴れの国」といわれ、気候は温暖で災害も少なく、降水日数が少ない一方、1級河川である高梁川の豊富な水源によって水不足になることもほとんどないため、綿花の栽培に適しており、良質な綿から糸をより合わせる技術が磨かれやすい環境にあります。
また、岡山県倉敷市といえば、ジーンズの聖地としてデニムを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、帆布の一大産地で国内の帆布生産シェアの7割は倉敷市で作られているほどです。
では、帆布って具体的に他の生地と何が違うのかご存知でしょうか?
帆布とは何かというところから調べてみることにしました。
そもそも帆布ってなに?なんて読むの?
より合わせた綿糸を用いて、1平方メートル(1m×1m)あたり8オンス・約227g以上に平織りにした布の事を「帆布(はんぷ)」といいます。英語ではCANVAS(キャンバス)と呼ばれ、聞き覚えのある方もおられると思います。
「帆の布」その名の通り、昔は船の帆に使用されていたことが由来で、複数の糸をねじって互いに巻き付け(より合わせ)、縦と横に糸を1本ずつ交互に上下させて織っているため(平織り)、交差する点が多く、目が詰まっていて丈夫、水漏れしないのに通気性に優れている事で、その丈夫な布はバッグやソファーなど強度が必要なアイテムの生地として、多くのブランドで採用されています。
皆さまも結構身近なアイテムで接しているはずです。
例えば、体操マットや跳び箱の最上部、コンバースのシューズもそうです。他にテントや、野球のベース、すもうのまわし等にも使われています。まるでジーンズのように一年を通してどんなシーンでも使える生地です。
倉敷帆布は1号から11号まである
平織り布の帆布は生地の厚みによって1号から11号まで作られています。号数が小さくなるほど生地が厚く重くなり、逆に号数が大きくなるほど生地は薄く軽くなります。ちょっと分かりにくいですね。重さでイメージした方が分かりやすいかもしれません。
1号帆布に至っては1平方メートルあたり1,014g
6号帆布だと、1平方メートルあたり647g
8号帆布だと、1平方メートルあたり500g
11号帆布だと、1平方メートルあたり343g
1号や2号など号数の小さいもの(生地が厚いもの)は、例えば、乗馬の蔵や手すりなどの建材、工場のベルトコンベアーなどが当てはまります。すっごく硬いんですよね。強度が強すぎて、ミシンなんてまったく通らないです。逆に10号や11号といった号数の大きいもの(生地が薄いもの)は家庭用ミシンで縫えるようなペラペラの生地になります。厚みによって使用用途が変わってくるのです。
弊社でメイン生地としてトートバッグに採用しているのは中厚の8号帆布となります。針や糸を8号帆布に耐えられるものにしているので、トートバッグとして適度な張りがありながらも、厚すぎず毎日ご使用いただいてもストレスのない厚みの帆布です。
倉敷帆布を採用した決め手はシャトル織機
なぜ、革製品オーダーメイド専門店の弊社が倉敷帆布を採用したのか。CxC Leatherの選考基準として、以下の2点を重視しています。
- 素材自体に物語があること
- 弊社で使用する革に通じる素材であること。
この2点を重視しています。
倉敷帆布は現在では希少なシャトル織機で織られています。織機(しょっき)とは生地を織る機械のことで、現在、この織機には緯糸(よこいと)を内蔵したシャトルがある「シャトル織機」とシャトルを使わない「シャトルレス織機」があります。
産業革命時代の象徴ともなったシャトル織機ですが、処理能力に限界があって現在ではレピア織機など生産性を重視したコンピュータ制御での高速織機が主流となり、いまではシャトル織機はほとんど使用されておらず、貴重な織り機となりました。
しかしながら、シャトル織機で時間をかけて丁寧に織ることで、表面に凸凹感のあるふっくらとした温かみのある風合いを生むことが可能になります。高密度で織るからこそ、耐久性が非常に高いだけでなく、耐水性、耐燃性にも優れている側面を持っています。シャトル織機で織った生地から作られたアイテムは長くお使いいただけることが分かるかと思います。
シャトル織機について、提携先の株式会社バイストン様のホームページが詳しく書かれていますので、参考になさってください。
引用:技を織る(製造工程)
引用元:株式会社バイストン
生産性を追い求める時代の中で淘汰されながらも、生地のクオリティ、昔ながらの風合いを追い求めるシャトル織機にこだわり続ける倉敷市の職人のプライドには筆舌に尽くしがたいものがあります。織物に対して時間と手間をかけること。昔、古着に携わっていた者としてはシャトル織りと聞いただけでビビっとくるものがありました。
シャトル織機で織った織物の特徴はなんといってもセルビッチ(耳があること)。
シャトル織機の最大の特徴である美しい仕上がりのセルビッチ、これが古着に携わっていた者の心を鷲掴みにします。古着好きな方であればもうお分かりですよね。
1980年以前のリーバイスのデニムにもこのセルビッチと呼ばれるものがついています。通称「耳」と呼ばれる部分でリーバイスのデニムはこの耳の部分に赤いラインが入ることから赤耳と呼ばれています。1980年代に入り生産効率やデニムとして生地の捻れに対する改善で製造方法が変更され赤耳は姿を消してしまいました。それでも、風合い、独特な色落ちは時代を越えて今でも多くの方に愛されていて、その価値は薄れることはありません。古着の世界では耳があるか無いかで「ヴィンテージ」、「レギュラー」と呼び方が変わるほどこのディテールが重要視されています。倉敷市の児島地区で作られるデニムはセルビッチ付きのデニムを生産していてジャパンクオリティとして「児島デニム」、「児島ジーンズ」として世界中のブランドで採用されています。
このことからもシャトル織機を通して生産されたアイテムが多くの方から親しまれていることが見えてきます。
生産効率のみを追わず、求める品質にとことんこだわる。そんな倉敷職人の姿勢に共感し、倉敷帆布をトートバッグの生地として採用することを決めました。
倉敷帆布の魅力はなにか
- 丈夫である
倉敷帆布は国産の最高級帆布。バッグはもちろん、身近なところでは靴業界ではコンバースのオールスター、野球のベースにも使われています。外で毎日履きつぶす靴、金属のスパイクで踏まれていくベース。これを聞いただけでも生地の耐久性は折り紙つきということが分かります。 - 耐水性が高い
高密度に織り上げられた生地、天然の綿に油分が含まれることから撥水性があります。帆布は濡れることで繊維の目がつまるのでバッグの中まで浸水することを抑える効果があります。キャンプで使用されているノルディスクのアスガルドも同じ理屈で雨が降るとテント生地は濡れるものの、浸透して雨漏れをすることがないのは同じ効果です。 - 不燃性が高い
ナイロンなどの生地と違って、素材自体の引きさきの強さが強く、あまり燃えることがありません。火にも強く、多少火に当たるぐらいでは生地が燃える、穴が開くといったことはありません。 - エイジングを楽しめる
革と同じように、使えば使うほど味が出るエイジングを楽しめることです。使うほどに硬かった生地は柔らかくなり味わいが深まり、ハンドルに使用するヌメ革のブッテーロとの相性も良く、生活に馴染むバッグへ変化をしていく過程をお楽しみいただけます。
倉敷帆布を取り扱う上での注意点・メンテナンス
- ホコリ対策
帆布は縦と横に糸を1本ずつ交互に上下させて織る平織りとなっているため、織り目の隙間にホコリが溜まりやすくなります。定期的なメンテナンスとして織り目に添ったブラッシングが効果的です。 - 水対策
帆布は撥水効果があり、水に強い生地ですが、綺麗な状態を保つためには防水スプレーを使うことをおすすめしています。スプレーのかけすぎは生地の状態によって色むらが出る恐れがありますので、まずは目立たない箇所でお試しいただき、問題がない場合は少し離したところからバッグ全体に吹きかけてください。スプレー後は陰干しで完全に乾燥させてからお使い下さい。
雨や水に濡れてしまった場合は乾いた布で水分を拭き取ります。濡れた部分が水シミとなっている場合は、固く絞った布で叩くように全体を拭きあげシミを目立たなくさせます。 - 汚れ対策
薄いカラーのアイテムをお使いで、黒ずみなどの汚れが気になる場合は白い消しゴムで軽くこすると汚れが取れる場合があります。汚れの範囲が広い場合は中性洗剤を含ませブラシや布で汚れを落とします。
染色された生地は色落ちをする場合がありますので汚れ落としの場合は十分に注意して行う必要があります。保管方法は湿気や直射日光は避け、風通しの良い場所に保管してください。
メンテナンス方法は革と共通する面も多く、倉敷帆布のアイテムを丁寧に長くお使いになりたい方は、ブラシや防水スプレーはご用意頂く方が安心です。
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