CxC Leatherオーナー夫妻

【対談】滋賀県・豊郷町の革工房『CxC Leather』~革への愛、地元への思い

滋賀県東部に位置する豊郷町。

そこで、革工房『CxC Leather』を営むYUKINOさんとHIROKIさんにお話を伺います。

革工房『CxC Leather』はインターネット専売サービスでありながらも、豊郷町観光協会主催によるワークショップの開催、ふるさと納税の返礼品としての販売依頼など、地元に根付いた活動でも知られるようになりました。

お二人から「豊郷町へ感謝の思いを届けたい」とお聞きしていることもあり、なぜ豊郷町で革工房を始められたのか、また今後の活動などについて、対談させていただくことになりました。

~編集部「こんにちは!本日はよろしくお願いいたします。まずはお二人のプロフィールをお教えいただけますでしょうか。」

CxC Leatherのオーナーをイメージしたイラスト

~YUKINO

「豊郷町在住の夫婦、わたし(YUKINO)とHIROKIで革工房『CxC Leather』を営んでいます。
共に41歳。中学生の長男、小学生の長女、3歳のトイプードルの4人+1匹で暮らしています。
わたし(YUKINO)が『CxC Leather』の代表を務めており、製作の全体を統括しています。
HIROKIは、HPの運営をはじめ、全体管理を行っています。」

~編集部「CxC Leatherで働くスタッフのみなさまもご紹介いただけますでしょうか。」

CxC Leatherの男性オーナーをイメージしたいいラスト

~HIROKI

「IKUMIは豊郷町出身で、CxC Leatherでは製作担当であり、製作リーダーも務めてもらっています。
トートバッグから革小物全般の製作を担う、頼もしい存在ですね。

MIKIも豊郷町出身で、製作担当を担ってもらっています。
2022年4月に採用されたニューフェイスですよ。

KIYOMIは豊郷町在住で、受注管理を担当してもらっています。
ハンドメイドサイトでの販売時期より管理を支えてくれているベテランスタッフですね。

SUNAOは豊郷町出身で、現在は大阪在住です。
主に財布の製作を担当する提携工房『DIY plus株式会社』の代表でもあります。
革製品の製作一筋15年のベテラン職人なのですよ。

TAMETOは豊郷町在住でCxC Leatherの頭脳です。
HPの製作、運営のアドバイスなどのコンサルタントとして参加してもらっています。

スタッフのみんなもすべて豊郷町に縁のある人ばかりなのですよ!」

~編集部「みなさん『豊郷町』に縁がある方ばかりなのですね!」「では、CxC Leatherとはどのような工房なのかお聞かせいただけますか。」

CxC Leatherのオーナーをイメージしたイラスト

~YUKINO

「CxC Leatherでは、”革製品の製作販売”を手がけています。

2016年より、カラーオーダーによる革製品の販売を、ハンドメイドサイト『minne』『creema』を中心にはじめました。

おかげさまでminne、creemaの両サイトで『人気作家ランキング』にランクインし、注目が集まるようになったのです。そこでminne、creemaだけではなく、「もっと多くの方々に『CxC Leather』の革製品を知ってもらいたい!」と考えるようになりました。

2019年より、カラーシミュレーションが可能な自社サイトをオープンし、今では自社での販売をメインにブランド展開を行っています。」

~編集部「お二人の今までのビジネスキャリアをお聞かせいただけますか。もともと革製品の制作をお仕事にしたいと思っていたのでしょうか?」

CxC Leatherのオーナーをイメージしたイラスト

~YUKINO

「わたしは、東京の美容専門学校を卒業した後、美容師の道に進みました。
以降、エステティシャンに転職しましたが、結婚を機に専業主婦となりました。

2015年には、雑貨の卸売りを行う会社にパートとして入社したのですが、それがCxC Leatherを始めるきっかけとなっています。

もともと革製品の製作については、夫の趣味だったんです。

見ているうちに「自分もやってみたいなぁ」って思うようになり、レザークラフトの端材で革小物の製作を始めたのです。すると、革の魅力を感じると同時に、持ち前の手先の器用さも相まって、どんどんハマっていく自分がいました。

その中で制作したミニチュアのブーツを、なんとパート先の雑貨卸売り会社を通して卸売りすることに。

この経験が自分の中で大きな起点となり、世間でのハンドメイドサイトの盛り上がりと共に販売先をminne、creemaに移して活動を始めました。
そこで、もともと自分用に製作した”本革リボンのスマホケース”をminneで販売してみたのですが、瞬く間に大ヒットとなり注目されるようになりました。

それからは、「革製品の製作を本業としていこう!」と考えるようになり、『CxC Leather』として起業することになったのです。」

CxC Leatherの男性オーナーをイメージしたいいラスト

~HIROKI

「ぼくは、東京の古着屋からビジネスキャリアをスタートしています。
その後、滋賀県にて独立したのですが、店舗にてヌメ革を使ったバイカーズウォレットの販売を始めてみたのです。

それがきっかけとなって革製品の製作に興味を持つようになり、当時製作を担当していたスタッフに師事することになりました。

以降、革小物作りを趣味として始めるようになったのです。
ただ、結婚を機に生活の安定を考えるようになり、いったんは大手運送会社に営業として就職して、約10年間はサラリーマンとして働いていました。

その期間も、革製品の製作は趣味として続けていたのです。

しかし、2016年に妻が雑貨の卸売り会社にパートとして入ったことをきっかけに、革製品の製作、販売を本格的に始めることになりました。当時はサラリーマンだったぼくは、ハンドメイドサイトの立ち上げを行い、運営から製作体制、販売体制まで1年かかって整えました。

そして2017年には脱サラし、本業として『CxC Leather』を始めることにしたのです。」

~編集部「『CxC Leather』はHIROKIさんの趣味がきっかけだったのですね!」「ではなぜHIROKIさんは、革製品の制作を始められたのですか?」

CxC Leatherの男性オーナーをイメージしたいいラスト

~HIROKI

「ぼくが最初に『革』に触れたのは15年以上前のことで、実はと言うと…当時はまったく興味がなかったんです(笑)。20代の頃にはヴィンテージ古着にハマり、半分オタク状態のころで(笑)、革というより「新品」に興味がありませんでした。

古着屋を営んでいたのは、年代が古い商品、時間が経っても価値があるもの=「良い物」と思い込んでいた時期なのです。その当時、店のお客さんにハーレー乗りの軍団がいまして、その中で”ヌメ革の財布作り”が流行っていました。

中には本格的に職人から学び、自分で工房を持つまでの人もいました。

そのようなおつきあいから、店舗で財布を取り扱い始めたのが、本格的に革に触れるきっかけとなったのです。」

~編集部「なるほど、そのようなきっかけがあったのですね。HIROKIさんはそこで、一気に革製品にのめり込んでいったのですか?」

初期製作の財布を持つHIROKI
CxC Leatherの男性オーナーをイメージしたいいラスト

~HIROKI

「いやそれが、最初あまり興味がなかったのですよ(笑)。でも、取り扱う商品なので一度自分でも使ってみようかと。そこで手に取ったのが”ヌメ革の財布”だったのです。

それが、ハマってしまうきっかけとなりました。

最初は肌色の少し硬い革の印象しかなかった財布が使うほどに手に馴染み、しなやかに、色もどんどんと光沢と深みが増してくる…。

革の財布が心から「面白い」と思うまでに、さほど時間はかかりませんでしたね。

でもいま考えてみると、その魅力にハマるのも当たり前だと感じています。

良いものは後世に残るヴィンテージとなります。

後世には素材が良くないと残らない。

これは革も同じだからです。」

~編集部「HIROKIさんが考える”革の魅力”とは何ですか?」

CxC Leatherの男性オーナーをイメージしたいいラスト

~HIROKI

「もともとぼくは、凝り性なところがあり、古着でも年代やブランドの成り立ち、素材などを調べるのが大好きです。

ひとたび興味を持ったならば、有名ブランドが使っている革を調べる、その革はどこの国、どこの会社で作っているのだろうと興味が尽きないのです。

そんな感じでどんどんと革の世界にのめり込んでいきました。

調べれば調べるほど、また実際に手に取って比べてみると、本当に素材の違いが分かります。

革の作り方(鞣し方)やタンナー(革を作る会社)の伝統製法によって、素材(原皮)が同じでも全く違うものになります。

知れば知るほど…革の魅力にどっぷり浸かっている自分がそこにいたのです。」

~編集部「HIROKIさんはどうやって革製品の制作を学んだのですか?」

CxC Leatherの男性オーナーをイメージしたいいラスト

~HIROKI

「その当時、革の魅力については理解していましたが製作についてはまだまだ素人で、作れる商品も限られていました。

たまたま妻の作った商品がハンドメイドサイトでヒットしたのもありましたが、独立なんて”夢の話”と思っていました。

しかしその頃、幼馴染が長年勤めた鞄工房から独立する、という話が入ってきたのです。

その幼馴染はその道15年以上、有名店のOEMも担当する会社の工場長をしていました。いわばプロ中のプロですね。

基本的にオーダーメイド専門のファクトリーショップを開業する、一からのスタートであったために、製作に余裕があるとのことで製作のお願いや技術指導もしてもらえたのです。

これが独立の近道となり、自身の革製品の制作の自信にもなりました。」

~編集部「現在は豊郷町に工房を構えておられます。なぜ豊郷町で活動を始められることになったのですか?」

CxC Leatherのオーナーをイメージしたイラスト

~YUKINO

「豊郷町にある工房は、自宅兼工房となっています。

建築した一軒家の1階が仕切りのない1フロアとなっており、一角が製作工房となっています。

起業当時は子供も小学校に入りたてで、なるべく毎日、下校時には家で迎えるようにしたいと思っていました。

そう2人で考え、賃貸や外部に工房を建設するのではなく、自宅内に工房を構えようということになったのです。」

~編集部「豊郷町のご自宅に工房を構えておられるということですが、豊郷町での取り組みにはどのようなものがありますか?」

CxC Leatherのオーナーをイメージしたイラスト

~YUKINO

「工房は豊郷町にあるものの、もともとハンドメイドサイトからスタートしたインターネット専売の工房ということもあり、地域に根ざしたことがなかなかできていませんでした。

しかし、2021年末に豊郷町観光協会様よりお声がけをいただき、CxC Leatherとして初めてのワークショプを開催させていただきました。」

~編集部「ワークショプとはどのようなものだったのですか?」

革こもの作りのワークショップでテーブルを囲む女性
CxC Leatherのオーナーをイメージしたイラスト

~YUKINO

「豊郷町観光協会様からご依頼をいただきました。

私たちはインターネット専売であるのですが、地域の商工会や子供たちの口コミを通して町内では一定の認知度があったようです。

ワークショップとお聞きして不安もありましたが、嬉しいことに告知をしてすぐに定員達成となりました。

「CxC Leatherがやるなら行きたい!」

「次回の予定はないの?」

といった追加のお問い合わせも多数いただいたほどでした。

ワークショップでは、比較的作りやすい”リボンキーリング”を題材にしています。(リボンキーリングとはこちらを参照してください

当日は、小学生から60代くらいの方まで、幅広い年代の方々にお越しいただきました。

初回ということもあり「革とは何か」といった説明からはじめ、革製品の制作を楽しんでいただきました。

次回、ワークショップを開催する機会があれば、裁縫なども踏まえた、一歩踏み込んだテーマもいいかなと感じています。

~編集部「豊郷町は生まれ育った地元ということですが、どのような町なのでしょうか?」

CxC Leatherの男性オーナーをイメージしたいいラスト

~HIROKI

「一言で言うと、適度に田舎で暮らしやすい町ですね。

豊郷町は滋賀県で一番小さな自治体で、人口も7000人程度、町内を自転車で周りきれるぐらい。緑豊かな町です。

豊郷町をご存知でない方がこれだけ聞くと「どんな田舎?」と思われるでしょうが(笑)、国道に面していて商業施設も多くあります。

町の中心には総合病院もあり、お年寄りから子供まで住みやすい町だと感じています。

JRの最寄り駅もさほど遠くなく、京都、大阪への通勤、通学をされる方も多くいらっしゃいます。」

~編集部「豊郷町での子供時代からのエピソードはありますか?」

CxC Leatherの男性オーナーをイメージしたいいラスト

~HIROKI

「やはり小さな町ということもあり、横のつながりを強く感じますね。

提携工房のDIY plusの代表のSUNAO、HP運営のTAMETOも中学時代の同級生ですし、スタッフのIKUMIも実家が近く小さい頃から知っています。

MIKIも同級生の妹とチーム豊郷で構成されていますよ(笑)。」

~編集部「豊郷町への思いや誇りに思う点をお聞かせください」

豊郷小学校旧校舎
豊郷小学校旧校舎
CxC Leatherの男性オーナーをイメージしたいいラスト

~HIROKI

「豊郷町は、実は伊藤忠商事、丸紅の創業者である伊藤忠兵衛さんの生誕の地です。

伊藤忠にゆかりのある方が町内に多くの寄付をされています。

人口7000人の小さな田舎町に総合病院があるのもその功績によるものです。

中でも一番有名なのが豊郷小学校です。

アニメ好き、映画好きな方であればご存じである方もいらっしゃるのではないでしょうか?

豊郷小学校は建設当時、「東洋一の小学校」と言われましたが、丸紅の専務を務めた古川鉄次郎さん個人の寄付で建てられています。

老朽化により今では校舎としての役目は終えていますが、国の有形文化財として登録され、多くのドラマや映画の撮影にも使われています。

偉大な先人の寄付により小さな町に豊かな施設が多くあることは感謝であり、町民の誇りでもあります。」

~編集部「豊郷町で工房を続けてこられ、地域のみなさんからの見られ方や関係で何か変化はありましたか?」

CxC Leatherのオーナーをイメージしたイラスト

~YUKINO

「インターネットを通しての販売のため、活動当初、周りのほとんどは仕事内容をご存知ではありませんでした。

恐らく…”サラリーマンを辞めてウロウロしている”と思われていたと思います(笑)

しかし、活動の中で徐々に知り合いや商工会などを通じて少しずつ認知をいただくようになりました。

ワークショップのお誘い、ふるさと納税の返礼品の販売の依頼などをいただけるようになりました。」

~編集部「豊郷町で革製品の工房を始めて良かった点はありますか?」

CxC Leatherのオーナーをイメージしたイラスト

~YUKINO

「豊郷町が小さな町ということもあり、自宅での仕事ながら認知をいただけるのが速かったと思います。

CxC Leatherに携わってくれているスタッフ全員が豊郷町と縁のある人なので、小さな工房ではあるものの人材の確保に困らなかったのが一番良かった点です。」

~編集部「豊郷町での取り組みで課題に感じることはありますか?」

CxC Leatherのオーナーをイメージしたイラスト

~YUKINO

「やはりインターネット専売の事業であるために、多くの人と交流する機会が少ないことが課題だと考えています。

オーダーメイドの特性上、実際に目にしてもらうのが一番だとは常々思っています。

ただ、自宅内の工房、さらにコロナウイルス感染症拡大ということもあって、実際に手にとって商品を見てもらう機会が作れないのは解消したい問題です。」

~編集部「豊郷町での将来の展望やビジョンをお聞かせください。」

CxC Leatherのオーナーをイメージしたイラスト

~YUKINO

「CxC Leatherを開業する当初は、”都会で展開する”という選択肢もありましたが、いまでは自分が生まれ育った地元『豊郷町』に感謝の思いを届けたい、との思いでいます。

そのため、前述の課題にもつながることですが、実際に商品を手にとっていただける場所、お客様と交流ができる場所として、町内に工房を建設したいと考えています。

自宅内での作業も手狭になってきているので、これは数年内にも実行したいと考えています。

これからも『豊郷町』に根付いて、CxC Leatherの革製品を多くの方々にお届けしていきます!」

~編集部「さいごに」

ワークショップイメージ全体

滋賀県で一番小さな町、豊郷町で革工房『CxC Leather』を営むYUKINOさんとHIROKIさんにお話を伺いました。

革製品に大きな魅力を感じたお二人が、地元の豊郷町で活動を続けられている姿を目の当たりにして、『革』そして『豊郷町』に対する愛を強く感じました。

さらに革の魅力を多くの人々に届けたい、また豊郷町に感謝を届けたいという思いを抱きながら工房での活動を続けられています。

数年内には、実際に商品を手にとって、お客様と交流ができる場所の提供を考えておられます。

これからも、豊郷町に根付いて魅力たっぷりの革製品を提供する『CxC Leather』、目を離すことができませんね。

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